対談記録
9月26日(土)19:00-20:30 Guest:石井啓一
タイムスケジュール
19:00-19:15 挨拶+ゲスト紹介
19:15-20:15 石井啓一+井上尚子対談
20:15-20:30 質疑応答/終わり
20:30-20:45 フリートーク
いしいちゃん くんくん
対談 石井(以下:いしいちゃん)/井上(以下:くんくん)
くんくん:
昨年、いしいちゃんのアトリエで共通の友達がイベントを開催した時に出会い、いしいちゃんから、陶芸作品のコンセプト(プロセス)をお聞きして、とても感銘を受けたので、今回、ゲストスピーカーに登場して頂くことになりました。
いしいちゃん:
今日は、出張先の大阪のホテルから参加しています。
粘土は有機物、陶器は無機物
くんくん:
以前、「陶器は人間が作った公害」というお話を聞いて驚き、SNSでイベント告知に使用した「粘土は有機物、陶器は無機物」について聞かせてください。
いしいちゃん:
陶器は、人間が初めて作った公害と言われています。
土(粘土)を整形して、1200度で焼くと有機物が無機物に変わります。
無機物になると、どんなに細かく砕いても有機物には戻すことはできないのです。腐らないし、形が変わらない。元来、地球上に無かったものを人間が作り、それを破棄している。
私たちが通常、陶器に対して抱くイメージは、“優しく、ほっこりする”などと思いますが、“作っては、地球に破棄している。謂わば、人類初の公害”。地球上にあるものを変容させてしまったのです。
陶芸家としての創作は、“作る全てのモノ”が良い物ばかりではなく、やはり、人間のエゴで作ってしまった形もあります。陶器を大事に使ってもらいたいと思うから、できるだけ無駄な物を作らないようにと心がけています。理想論ではあるけれども、自分の作品(陶器)が後世に渡って受け継がれて使ってもらいたいと、心の中で思い頑張っています。
もちろん、高額な食器ではなく、100円ショップの器を使うことも悪くはないんです!
例えば、“お茶碗が欲しい”と思った時、100円ショップで自分の理想的なお茶碗と出会えたなら、是非買うべきで、それを大切に子供から孫の代まで受け継いでいくという意識で大切に使う。もし、使わなくなったら、リサイクルや、インターネットサイトで売るなど資源を大切にして欲しい。大事にする気持ちでモノを買ったり、未来の限りある資源に対して上手に向き合うことが大切。
僕の場合は、食器を作って、人に買ってもらい、使ってもらう。現在、“陶芸ブーム”ではあるけれど、個人的には、無駄に作ること、買うことをお勧めしていません。陶芸家として、有機物から無機物に変えてしまった人類としてこの知識を伝えたいと思っています。
くんくん:
一般的に私たちは、消費活動を安易に考え、無意識に行なっている気がします。
実際に、自分たちの生活を豊かにする様々なものに対しても、敬意を払うべきですね。安易な考えを反省すると共に、“自分が大事にしたいと思う気持ち”を学びました。
自分の性格に合った食器選び
くんくん:
いしいちゃんの作品で、マグカップの取手部分が3点構造になっていて、構造的には少し弱い。そのため、洗い物をする時に気を遣い、丁寧に洗ったり、食器棚に片付ける時も積み重ねて雑に扱わず、何処にしまうかを考えるようになり、今までなかった発想に変わっています。
食器の色も同様に意識が変わりました。白い陶器(食器)についても、購入後、初めて使う前に、お米の研ぎ汁や小麦粉ひとつまみを入れて、沸騰したお湯で器を“目止め”する一手間をしたり。今まで、器と対話をしてこなかったので、この一手間はとても衝撃的でした。
いしいちゃん:
でもね、毎日使う器だから、自分にどういう器が合うか(相性がいいか)を見つけることが大事!だと思います。見た目が綺麗だから大切にする人もいれば、時間をかけて丁寧に洗って、拭いて、乾かして、片付けることが好きな人もいれば、100円ショップの食器はとても強度があるので、乱雑に洗って重ねても壊れないし、簡単に扱えてストレスがなく、自分の生活に合っていればそれでいいのです。壊れないから長い間使い続けられます。
きれいなものだけを使うとなると、ミュージアムクラスのいいものを使わなくてはならないし、ハードルが上がってしまいます。(笑)“自分に合う器を自分の家に用意する”ということ。
僕的には、陶器の器だけがすばらしいとは思いません。例えば、漆器は保管が大変だけど、破れない、すごく自分との相性がいいから使い続ける。など。
東南アジアでは、水色、ピンクなどのカラフルなプラスチック容器を日常で使っていますね。プラスチック食器は、破れないし、かわいいし、軽量かつ安価で、生活に寄り添い、捨てられることなく愛用されています。
日常使う食器に対して、特に“陶器を買ってほしい”というのではなく、自分の生活に合っていて、捨てることなく、持続可能(サスティナブル)なものをずっと使っていく精神、意識があるといいなと思っています。僕も器が大好きだから、皆さんも「おうちの食器棚を見てみましょう。」って思うのです。そんな難しいことじゃないと思うし、気がつくことで、生活が楽しくなると思っています。
くんくん:
なるほどね!アジア地域、タイの屋台などもプラスチック皿を使っていますね。
いしいちゃん:
めちゃめちゃいいよ〜!!例えば、空芯菜のオイスター炒めなどをプラスチックのお皿に盛り付けると可愛いなあと思うでしょ!
くんくん:
確かに、文化によって器が違いますね。
私たちの子供の頃、小学校給食では、銀色のアルマイト皿を使っていましたね!
いしいちゃん:
え〜〜!!私たち、同年代なのに。僕のところは、ヌードカラーのプラスチック。横浜は持続可能な食器を当時から採用していたのかもしれないね。(笑)
だけど、プラスチックの皿も味気なかった。
ソフト麺をズルッと出して、カレーなどをかけて食べていましたね。
くんくん:
時代の変遷の中で、いろいろな器との関係性は、とても記憶に残っている気がします。
いしいちゃん:
器は、味に反映する。“器”そのモノとお料理との関係性。どんな器で食べていたかも記憶に残りますね!
くんくん:あ〜。確かに!!
いしいちゃん:
味噌汁をご飯茶碗に、ご飯を味噌汁用の漆碗に入れ替えて食べるだけでも、味に変化が生まれて、食感も匂いも違う感覚を味わえます!ぜひ、一回試しにやってみて!
くんくん:
面白い。一度やってもらいたい。皆さん、試してみてください。
私は、日本酒が好きでよく飲むのですが、お料理屋さんによっては、形と素材が違うデザインの複数のお猪口の中から一つ好きなものを選び、お酒を飲ませてくれます。びっくりするほどに、素材や形によって味が異なります。
このように、お料理と器の関係性について、聞かせてください。
料理はお腹を満たすもの、器はこころを満たすもの
いしいちゃん:器と料理は味に反映します。
器によって、お料理の味も匂いも食感も変わってくるので。
*いしいちゃんのラッピング紙(右写真)
「料理はお腹を満たすもの、器はこころを満たすもの」とコンセプトと共に器の目止めの方法、目止めをすることで色や匂い移りを防ぐことができるけど、エイジングも楽しんで欲しいことが明記されています。
いしいちゃん:
石川県の「和酒BAR縁がわ」https://www.facebook.com/washubarengawa/
このお店の日本酒マイスターが、陶器や磁器、ガラスなど様々な素材でお猪口から徳利をデザインして作っています。利酒師さん曰く、どの器も気を発しているため、味が変わると言うのです。形によって味が変わるそうです。
くんくん:ワインもグラスによって味や香りが変わりますもんね。
いしいちゃん:
陶器にも同じ関係性があります。例えば、コーヒーを飲むマグカップは、香りを引き立たせ、刺激が強くダイレクトに鼻に伝わるように、まっすぐな寸胴の形をしています。
でも、ティーカップは、柔らかく香って欲しいから丸い形の器なんです。紅茶の香りは刺激的ではなく、茶葉から抽出される香りが顔中にふわっと、アロマがゆき届くように広く丸い形なのです。
全部に理由があるんです!
くんくん:なるほど〜。形には全て理由がある。面白い!!
ちょっと話を変えて。
一生の仕事
くんくん:陶芸を始めたきっかけ、なぜ、陶芸家になったかを教えてください。
いしいちゃん:
高校1年の頃、美術大学受験のための予備校に通っていて、平面作品、絵を描くことが、どうしても好きになれず、でも、彫刻クラスで立体作品の創作は、自分にしっくりきて、楽しかった。そして、何よりも、歳を重ねてお爺ちゃんになっても、ちゃんと仕事をしていたいと思い、センスを問われる仕事で「芸術は爆発だ!」的な、岡本太郎や、鉄の彫刻家:クマさんのような作家には、なりたくはないと思ったんです。なぜなら、「お爺ちゃんになると変なものを作っているね」と言われるのは嫌だったから。(笑)
一生続けられる仕事がいいなと思った時、陶器なら年齢を重ねる度に技術も作品も円熟味が増して、熟達した陶芸家としての扱いを受けることが多いなと思って。
もともと陶器が好きだったこともあり、陶芸の道へ進みました。
くんくん:なるほどね。陶芸家として、師匠から受け継いだコンセプトに感銘を受けたので、皆さんにお話してください。
自然と共存、時に委ねる形
いしいちゃん:
僕も、きれいな形を作るのが陶芸家として、当たり前だと認識していた時もありました。例えば、器の口の部分は、丸い正円を目指して一生懸命に成形し、きれいな丸ができなかったら破棄したり、自分自身で使ったり、売らなかったりしていました。
僕が、理想としている陶芸家さんが石川県の山代温泉にある九谷焼窯元の4代目:須田菁華さんで、北大路魯山人が初代から作陶を学んだ窯元です。以前、須田菁華さんが、僕の器をみてくれる機会があり、その時の展示会で、いくつか形が少し崩れていても綺麗だなと思う作品、個人的に愛せるなと思う作品を置いていたら、須田菁華さんが「ひしゃげた器を出品しているのは、すごくいいね」と言ってくださり、びっくりしたんです。
僕は、「もっと形が崩れているものは、売れないので、破棄しています。」と話したら、須田さんから「それは、君のエゴだ」と言われ、「ぐにゃっとした形は、窯が作った自然の形。そのぐにゃっとした形を愛する人、つまり、あなたとは別の感覚の人が好むかもしれないのだから。窯から出た物をすべて並べてみなさい。」と話してくださり、実際にやってみたら、「私は、ぐにゃっと腰が曲がった器がどうしても好き」というお客さんや、「きれいじゃなけど、この器を貰って帰ります。」と、自分の中の好きな形を選ぶ様々なお客さんが沢山いたのです。
*九谷焼窯元須田菁華 https://www.mapple.net/spot/17010507/
2020年9月_Drawing Numbers 二子玉川店にて
今まで、無意識に名前も知らない誰かが言った“きれいな丸い器がいい”という概念を信じて作品を作って販売していたけれど、お客さんが僕とは違った感覚で器を愛で、購入する大切さを知りました。僕は、アーティストではなく、職人であり、自分のエゴをあまり出さずに、これからは、お客さんに選択を委ねていこうと意識した瞬間、「石井さんの器は、一つ一つに個性があり、いいものもあれば、ふわっと形が崩れたものもある。相対的に、これが石井さんのカラーであり、遠くから見ても石井さんの作品だとわかる。」とお客さんから言われて、とても嬉しく思いました。そして、その時、完成した全ての形を受け入れ、お客さんに選択を委ねる意識の変換が、今までやってきたことを、まるで点と点を結ぶように自分の作品性を完成させた瞬間になりました。
陶芸をやっていて良かったな〜と思いました。
器の中の景色
くんくん:
実際にいしいちゃんの作品を手にして、そのお客さんたちの気持ちに共感します!
私は、陶器が好きなので、作家モノの食器から100円ショップの物まで使っています。今まで、白い食器にコーヒーや紅茶の茶渋の色が沈着していくことが、どうしても気になり、漂白しなければと思っていたけれど、経年変化と色素沈着と共存していくと考えると味わい深く、年を重ねることが楽しくなりました。
いしいちゃん:骨董の世界では、その色素の沈着を、「景色」と言います。
くんくん:へ〜〜〜!!!(驚き)
いしいちゃん:
例えば、色素が沈着してしまった部分を、「雨漏り」と言ったり、色素ではないけれど、器のこうぶち(口の部分)が手作りなので、均一的な高さではなく、なだらかな山のような稜線になっている形状を「山」と言ったり、器の中に「一つの景色がある」と表現します。
また、わざと汚すという表現もあります。
骨董好きの人が、お猪口を常にポケットの中にいれて、ずっと手で触っていると、徐々にジーンズのように年季が入ってきて、器が人間の手で汚されて味わい深い表情になり、「器を育てている」と言ったりします。
くんくん:それは、いわゆる手垢が染み込むってこと!?
いしちゃん:言い方がひどいな〜!(笑)
手垢が染み込む。「汚れていく」という表現かな。エイジングしていく!!
くんくん:なるほどね〜。すばらしい。
いしいちゃん:
ある時、骨董好きで新品があまり好きでない人が、僕のお皿を買ってくれて、とてもめずらしいなと思ったら、購入した後、「このお皿を土の中に埋めます。」と言われ、何年後に掘り出すんだろう。とびっくりしたことがあります。
買って早々に、土に埋められちゃうんだ〜と思って、いろんな人がいて面白いなと思った。
くんくん:埋葬される。すばらしい。(笑)
いしいちゃん:きっと土の中の微生物が陶器の中に入り込んだりして、変化していくんでしょうね。(笑)
くんくん:
買った人がどのように使うか、ルールは無いものね!
コロナ禍で、キッチンに立ち自炊をする時間と、料理や器と向き合う機会が多くなりました。もちろん、UberEATSを利用して容器のまま食し、自分の食器を使わない人もいると思います。自粛期間は、食のスタイルを見つめ直す機会になったように思います。
以前、いしいちゃんは、お料理を作ることが好きとお聞きしたのですが、自然にできるようになったんですか?
いしいちゃん:
もともと料理に興味があり、母がお料理上手なんです。
でも、姉や弟はあまり興味がない。
僕は、自分で料理を作ることにどんどん興味が湧いて、自然な流れで“器と料理のコンビネーション”を考えられるようになり、良かったな〜と思っています。
いしいちゃんの作品の色(白、青、錆)について
くんくん:いしいちゃんの作品の特徴的な三色「白、青、錆」について教えてください。
いしいちゃん:
*白(White)
もともとは白二色だけでした。
皆さん、白のイメージはそれぞれにあると思いますが、
白の中にも、温かみを感じるマットな白と冷たさを感じる光沢のある白があります。
僕が使っている白は、
マットはアメリカのホワイトマットを使用し、温かみがあるイメージ。
光沢は、山口県萩焼の白で、冷たいイメージ。
手で触ると温かみも冷たさもより感じられます。
同じ形で、同じ温度で焼いていても、イメージの違いが出てくるので面白い。
季節によって、夏は冷たい白(光沢)の器を使い、冬は温かみのあるマットを使って欲しいな。
ホワイトマット
光沢
タレントのちはるさんが、モロッコ産のブルーの器がとても好きで、彼女が経営しているカフェでそれを食器として使いたいけれど、ブルーの色素に鉛が使われている為、食器には適さず装飾用ということで、「いしいちゃん、日本の器で鉛が入っていないブルーの器を作ってくれますか?」と依頼を受けたんです。
そこで、日本の釉薬会社にお願いして、このブルーの色を作ってもらいました。
そして、目黒のチャムアパートメント(東京)というカフェの展示スペースで初めて「ブルー展」を開催しました。来場者の反応が思いの外、ブルーの器に対して評判がイマイチ。気持ちが落ち込む、食欲減退につながる、味を美味しくさせない。等と言われてしまって。もともと、ブルーに対するこのようなセオリーがあると言われているのは知っていましたが・・・。
でも!!実際に、このブルーの食器にお料理をセットしてみたら、どんなお料理も立体的に見えるんです!食べ物にブルーの食べ物は無いでしょ!
例えば、白い器にシチューを入れると平面的に見える。また、黒や茶色の器に焼肉を盛り付けたら、平面的に見えてしまう。同系色で色が沈み込んでしまうから。
ブルーだとお料理を引き立て、コントラストが出るのが良さなんです!!!
今まで、テーブル・コーディネートをする際に、ブルーの配色が入ってくることが無かったので、すごく色彩の幅が広がりました。このテーブルの景色が気に入って、白二色からブルーが加わりました。
その後、このブルーが評判を得て、“モロッコ青と言えば、石井ちゃん”と言われるようになりました。ちはるさんにはとても感謝しています。
*錆(Rusty)
黒でもなく、茶色でもない、黒の中に茶色が浮かんでいるような色。
日本の人たちは朽ちかけていくものが好き、朽ちていくものへの愛情を感じると思います。
僕も、古い家屋が好きで、木材が朽ちていく様子がとても好きで、器でも同じような味わいを表現したいと思って。
陶器は700度の熱で素焼きする時に、硫化水素を含む水蒸気を放出し、水蒸気が立ち込めると生卵の腐ったような匂いがします。
硫化水素は、金属を腐食する作用があり、窯の周りの鉄骨はすごく錆びます。例えば、アトリエで使っている鉄瓶も中は錆びていないけれど、外側は錆びていて、いい色味を醸し出しています。この色がとても素敵で、陶器でも出したいと思って、この錆色を作りました。
くんくん:なるほど。色についてそれぞれストーリーがあり、素敵ですね。
錆色については、私も、大学の学生時代に鉄を錆びさせた作品を作っていたことがあり、共感できます。塩化第二鉄を使っていたかな。
いしいちゃん:版画のアクアチンとなどでも使いますね。
くんくん:
その腐食する作業で、思い切り腐食の煙を吸ってしまい、鼻の粘膜に炎症を来して、匂いを感じなくなった経験があります。
いしいちゃん:匂いが嗅げなくなるって、味もわからなくなった?
においのない世界を体験したことあるの?!
くんくん:
いわゆる、今、コロナの症状のように病気の症状とは違い、匂いや味がわからない症状ではなく、粘膜の炎症だから、味は、ある程度は感じられましたと思います。
人間は、体内からも食道から喉元にある嗅覚機能(レトロネーザル)と外から匂いを感じる機能(オルソネーザル)があります。これは人間にしかない機能です。*右図参照
体内から匂いを嗅ぐという経験は、例えばニンニクなど匂いが強い食べ物を食した時に、食道から匂いが口腔に上がってきますよね。食後にエチケットで、臭わないようにブレスケアなどを食べたりして匂いを消したりするでしょ。
*コロナウィルスの嗅覚障害について。当日、詳しく解説できなかったので、嗅覚障害についてご紹介。
新型コロナウイルス感染症と嗅覚・味覚障害
東京大学保健センター Webより抜粋 http://www.hc.u-tokyo.ac.jp/covid-19/smell_taste_disturbance/
新型コロナウイルスにより嗅覚障害が生じるメカニズムは、まだ十分には解明されていませんが、想定されるメカニズムとして以下の様なものがあげられます。通常のウイルス性感冒と同様に、鼻粘膜の浮腫、鼻汁といった鼻炎症状により匂いを感知する嗅細胞まで匂い物質が到達できないことが原因の可能性に加え、新型コロナウイルスには神経親和性があるといわれることから、ウイルスによる直接的な神経の障害の可能性も考えられます。ただ、後に述べるように、新型コロナウイルスによる嗅覚・味覚障害は、神経そのものの障害とするには早期に改善する例が多いため、神経自体の障害というより、神経周辺にある嗅細胞の支持細胞等への障害により、嗅神経の機能が阻害されている可能性も考えられます。
味覚障害に関しては、舌の味覚をつかさどる組織である味蕾や神経へのウイルスによる障害に加え、嗅覚障害に伴い食品の匂いがわからないことによる風味の障害が機序として想定されます。
大好きな旅
くんくん:
いしいちゃんは、旅好きとお聞きして、現在、旅に出られず、モヤモヤしていると。本来、コロナウィルス流行がなければ、アトリエを海外に移したかったんですよね。
いしいちゃん:
2月までは、ぎりぎり旅行に行けたんですけれど。
昨日、半年ぶりに飛行機で大阪に来て、やっぱり旅行が好きなんだなと感じています。
そもそもは、姉の旦那さんがインドネシア人なこともあり、インドネシアにアトリエを構えたいと思っていました。
インドネシアもお米を食べる文化で、日本と同じように田んぼがあります。お米は、砂地では育ちません。田んぼの土壌は、粘土質の土の上に水を張り、稲を植える。田んぼのある国の土壌を3メートル程掘ると、粘土層が必ず表出します。
山の裾野は、火山が降ってきたりして、鉄分が多く、焼くとクタっとなってしまい陶器には向いてないのですが、山の高地の土は、良質で純粋な土壌の粘土があり、陶器に適しています。
そんな山の上に棚田があるところで、いつか工房を構えて、現地で器を販売したり、日本にも輸出したいと思っていたんです。今まで、何度も渡航して、1ヶ月ほど住んでみたこともありますが、今回のコロナで難しいと判断しました。インドネシアでビジネスをしている日本人の友達も、現地の人材を大切にしながら商品を輸入していましたが、このコロナの影響で、ビジネスモデルが成り立たなくなり、仕事を閉じて日本に戻る人もいます。
現在の目黒のアトリエの契約も3年後までなので、新たに、世田谷(下北沢)に新しいアトリエを構えました。今後は、日本でやっていくことを決意したんです。
〜余談〜
地球の歩き方、東京版が、最初で最後で出版されたのを知ってますか?
コロナ禍で一回こっきりで出版された。「地球の歩き方」も稼がねばならない。
地球の歩き方 東京2021-2022 ダイヤモンド社
くんくん:
本来、旅に出たいと夢を抱きますが、コロナ自粛期間だからこそ気付くこともあった。
今まで旅行に行けて良かったなと、改めて思い返せる良き時間にもなっていると思います。
決してネガティブなことだけではないと思っています。
記憶に残るのは、失敗した旅!
いしいちゃん:
そうそう、旅といえば、失敗した旅行の方が記憶に残る!!
今回の大阪の旅でも、大失敗したんです。(大笑)
昨日は、夕方に大阪について、鶴橋のコリアンタウンにある「お好み焼き オモニ」で夕飯を食べて、お店を梯子したいから、ここでは少量食べて、次のお店で焼肉とかを食べようと思ったのですが、オモニのお好み焼きやお料理が美味しすぎて、結局、沢山追加注文して食べて、飲んでしまい、かなり出来上がってしまったんです。
*「お好み焼き オモニ 本店」
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270205/27000560/dtlmap/
でも、最後は難波で飲んで閉めようと、鶴橋から難波へ移動のため近鉄線に乗ったら、逆方向の電車に乗ってしまい、酔っ払っているから「逆方向に向かっているね〜」と笑って話して、土地勘もないので、すぐに乗り換えられるかと思ったら、次の停車駅まで30分ノンストップ!!
そして、着いた先は、「五位堂」駅!!なんと、大阪から山を超えて、 “奈良県内”!!
大阪から五位堂へ向かうまで、徐々に暗くなり明かりがないなと思っていたら、山を超えていていた。そして、この電車は、大阪を職場とする奈良在住の人たちの通勤電車で、僕が乗った時は帰宅時間で混雑していました。
五位堂駅にようやく着いて、鶴橋へ戻ろうと思ったら、戻る電車は各駅停車しかない!
約45分かけて戻り、大阪へ戻る車内は空いており、寝ながら鶴橋に戻りました。
しかし、ここから更なるハプニング!!
やっと鶴橋について下車して、携帯がないがないことに気づき!!急いで駅長室で問い合わせて、車内を調べてもらったら、「落とし物の携帯はありません」というのです。
だけど、僕は、“絶対あると思います”と伝えたら、駅長さんから「お客さんが乗っていた電車が2〜3分後に戻ってくるので、ご自身で探してみてください」と言われ、戻ってきた電車内を探そうと、乗り込んだら、この電車は大阪発の奈良行き!さっきと同様に帰宅ラッシュの満員電車なの。だから、混雑した車内で、「携帯を無くして、探しています!」と座っている人に立ってもらったり、椅子の隙間を探し、ようやく見つかったと思った瞬間!!プッシューーーっとドアが閉まり、再度、五位堂駅までノンストップとなりました。
結局、また、30分五位堂駅まで。
鶴橋から難波にいくまで、また1時間半。
くんくん:大爆笑。なんの罰ゲーム???
いしいちゃん:
でも、すっごくいい思い出になった。
他にも電車の中で色々あり、呪われているのかなと思ったほど。
日本でも海外旅行並みの大失敗を経験できて面白いな〜と思い、今回は、仕事の出張ですが、やっぱり旅行は楽しいと思いました。
旅行での失敗は、絶対忘れない、記憶に残るんですよね!
くんくん:いしいちゃんは、いい人だね〜!!寛容な心に感服です。
いしいちゃん:
何事もスムーズに進んでしまう旅は、忘れがち。今までの経験として、覚えていないことが多い。
例えば、台湾は、とてもいい街で、日本人の感覚にも似ていて、人も優しく、あまりストレスを感じずにスムーズになんでもできてしまうので、旅の思い出が全く残らない。台湾に行くなら、何かのついでに台北に立ち寄るのはいいと思う。でも、ピンポイントでは行こうと思わない。地方には旅行してみたいと思うけどね〜。
やっぱり、旅行は、ドキドキ、ワクワクしながら、何かを失敗するためにいくものだと思うから、今回の大阪出張の「五位堂」という駅名は、一生忘れない。(笑)
くんくん:
違う文字で「五位堂」を「誤移動」とも思える。
大阪から奈良まで2往復して、すでに酔いが覚めてしまったのでは?
いしいちゃん:
それだけでは、ハプニングは終わらなかったんです!
実は、携帯も戻って、ようやく難波に向えると思ったら、今度は鶴橋駅で変な人に「お兄さん、一緒に飲みに行こうよ〜。電話番号教えて〜」と絡まれるという事態!(きっと悪人ではない)その人から逃げるために難波とは逆方面のホームに移動したりして、なかなか難波へ辿りつかなかった。
なぜ、今日に限ってサプライズが続くのかと思って、びっくり!!
全ては、神の采配に委ねられたと思いつつ。最終的に難波に無事に到着して、すごく飲んでしまいました。(大笑)
今朝のジムでも、携帯アプリで消費カロリーをチェックしたら、ダミアンの数字「666」カロリーと表示されて、怖〜いって思っちゃった。
久しぶりの旅は、内容が詰まりすぎた良い旅になりました。
くんくん:
アクシデントと捉えるのではなく、“面白いサプライズ”と捉えるのは素晴らしいことですね。
いしいちゃん:
大人になると成功することに慣れてきてしまいますが、何事も失敗することで刺激を得られるから、失敗する旅行は大事!!
コロナが落ち着いたら、皆さん、旅行に行って欲しい。
くんくん:
そうですね!
旅行でも、ツアー旅行は、みんな一緒で安全確保されいて、失敗しない守られた環境だから、私は、とても苦手です。
危機感がないと思い出に残らない!(笑)
いしいちゃん:
学生時代に、初めて行った香港旅行は、ツアー旅行でホテルまでの送迎も、日中から夜までの観光ツアーも組まれていました。
そして、帰国の日は、飛行機の搭乗時間が午後5時なのに、ツアーバスで、早朝6時から正午前まで、同じ飛行機に乗る人たちを各ホテルにピックアップして長時間たらい回し。その後、食べたくもないレストランで昼食を食べ、午後2時に空港に到着し、搭乗の5時まで待機することになって、うんざりして、二度とツアーでは行かないと思った。
くんくん:
旅行スケジュールをツアー会社に委ねると楽だし、それが好きな人もいるから、ツアー旅行がダメというのではなく、それはそれでいいとも思っています。
しかし、私、個人的には、向いてないなと思っています。
いしいちゃん:
そうね〜。ツアーが好きな人もいるから、それはいいこと!
そして、僕たちのような場当たり的な未スケジュールで、詳細を決めないで旅行する人は、すごく疲れが溜まるんだって!精神的にも身体的にも、脳味噌が常に緊張状態にあるから、休暇をとるための旅であっても、疲れが取れないのだと、脳科学者が話していました。だから、我々は、疲弊して旅から帰ってくることになるんです。
くんくん:
疲弊して帰国する感覚は、わかります。全スケジュール、ホテルなど含めて全部を自分で計画するから、旅のスタートの空港から帰国するまで、緊張の連続で、それが旅の醍醐味と思って、脳味噌フル回転していますね!
例えば、言葉がわからない外国で、乗車した電車が遅延したりして、乗り換えのアナウンスを聞き取れず、車内に残っていると、地元の人から、声をかけて助けてもらうなど。そして、予定時間通りにはうまく運ばない。頭を常にフル回転して、とても疲れるけれど、それがいいんですよね〜!
いしいちゃん:
以前、友達が、フランスから上海経由のトランジットして帰国する際、2つの国際空港間を移動する乗り換え便だったのです。両空港の距離は離れているため、電車or バスor タクシーを使って、自分で移動しなければならず、しかし、その友達は、この距離感を知らなかったので、移動のための中国のお金(元)を持っていなかったの。そこで、”どうしよう”と悩んだ末に、いしいちゃんに電話して聞けば、解決方法を導いてもらえると思って、僕に電話がかかってきたんです。日本はまだ、早朝5時頃で、起こされましたよ。
でも、そこで電話を僕にかけてきた友達は頭がいいです!僕は沢山失敗をしているから知恵があると知っていたんでしょうね。
Google map
困った友を助けるべく、フランスから戻ってきたなら、ユーロ、日本円を持っているので、空港のスターバックスなどで買い物をして、お釣りを中国元でもらい、電車で移動したらと教えてあげたんです。
そのお陰で、友達は、電車ではなく、タクシーで移動し、ギリギリに空港に到着して、無事に帰国できたというエピソードがありました。
何が言いたいかというと、その友達は、悩んだ時は、いしいちゃんに電話をしようと思ったことが、結果として大正解だった。ものすごく脳味噌を回転させて、どうしようと考えたと思うんです。 “誰かに聞いてみよう”、“いしいちゃんに聞いてみよう”という懸命な判断は正しかった。
失敗した旅行を参加者の皆さんにもしてもらいたい。
くんくん:
たしかに、誰かに聞いてみようという判断は素晴らしい。それもいしいちゃんに電話しようと。たとえ日本が早朝で寝ていたとしてもね。
参加者からQ and A
*器と料理の関係性*
参加者Q:
先日、湯治場で、お坊さんが使う応量器でご飯をいただいて、器によって味が変わる経験をしました。食事を頂く際に、器によって味が影響されて面白いなと思いました。
石井さんは、この器でたべると美味しく感じる食べ物や、その逆の食べ物と器の関係性を、他に知っていますか?
例えば、カフェオレボールでおかゆを食べたら美味しかったなど。
いしいちゃんA:
これが器かどうか、わからないのですが、東南アジアは、バナナの葉っぱに料理を乗せて、手で食べると美味しい。最近のカレー屋さんでは、バナナリーフの器でカレーを提供しているお店もありますが、手で混ぜながらたべると味わいが全然違って、美味しいんです。本当のカレーの美味しさを味わえるので、ぜひ、皆さんにやってもらいたい。
例えば、カレーの味もバリエーションがあり、辛いもの、甘いもの、バターを沢山使用したカレーなど、インドやインドネシア、マレーシアなど現地の人たちは、カレーを手で食べる文化なので、様々な味のカレーを自分の手(指)で混ぜながら、味を作って食べるのが特徴。
先ほども話した姉の旦那さんはインドネシア人なので、手で食べることが日常で、本当は全てのものを手で食べたいと思っています。スプーンだと鉄分の味がするし、スプーンや食器が歯に当たることで、口に違和感を感じるから。
それぞれの国の文化を味わうのも大切!
ここ近年、シーフードを手で食べるお店も出てきたから、食器に関して意識の変化があるかもしれませんね。
例えば、陶器も磁器も性質が異なり、陶器は水や匂いを吸うのが特徴。
本当に陶器の性質を生かした使い方をする人は、30分前くらいに冷たい水に器を浸けておいて、食べる直前に冷えたお皿にツマとお刺身を盛り付けて、冷たさを保ったりします。また、暖かい料理の場合は、お湯の中に器を入れて温めて、暖くなった器にスープや煮物を入れて、料理の温度をキープします。日本食のお店では器とお料理の温度の工夫をしていますね〜。
日本の食文化だけが、器を持って食べる習慣があるので、冷たい器、暖かい器を手の感触からも味わうと、五感で味わう楽しさに変わりますね。
冷やしたり、温めたりする手間はかかりますが、やってみると、手からも味わえます。
日本の食器の良さかもしれませんね。
くんくん:素晴らしい!
いしいちゃん:
指で食べる文化は素晴らしいですね。10年位前に、上野のインド料理屋さんで隣のインド人が手で食べていたので、初めてやってみたら美味しかった。
くんくん:マサラワーラーというインドカレーのユニット。https://masalawala.info
彼らも、バナナリーフでインドカレーを提供しています。以前、お寺で開催された彼らのイベントでインドカレーを手で食べた経験があります。指の触覚、温度の変化など、料理の概念が変わりました。
いしいちゃん:
指で、小さい団子を作って食べる。
日本人は、食べ物を箸や食器でたべる概念、頭のネジを少し外して、指で食べてみると気づくことが多いと思います。
くんくん:日本で言えばおにぎり。指の感触の経験はおにぎりですかね!
そして、バナナリーフの器は、自然に返せる、リサイクルできていいですね。
いしいちゃん:
マレーシアのレストランでは、なんとなく何回も使いましている??という時もあった。何度かは、キッチンに洗って戻していたような。
くんくん:ボロボロになったら、自然に返す。
いしいちゃん:
パキスタン料理の店主曰く、バナナリーフからもバナナの良いエキスが出て体にいい。と言っていました。
〜参考〜
*バナナの葉の効能
たくさんのポリフェノールやカテキンを含んでいます。 そのため、抗酸化作用が高く、ストレスの軽減やコレステロールの低下、慢性的な不調の改善に繋がります。 また、アラントインや不溶性食物繊維を含むので、免疫力を高め、抗炎症作用や抗アレルギー作用、便秘の改善などが期待できます。https://senang.co.jp/1028/
*バナナリーフでカレーを食べる
*粘土の匂いについて*
参加者Q:
私は、マレーシアのクアラルンプールに住んでいたことがあります。
マレーシアは、インド系の人が住んでいるので、バナナ葉は人気です。インド系の料理、カレーを食べるとき、バナナリーフはよく使われています。自然豊かでバナナは至る所に生えているので、バナナリーフは使い捨てで使用されています。ヒンズー教上の理由でも、唾液がついているものは不浄とされるため、スプーン等もどんなに洗ったとしても汚く感じてしまうそう。そのため、洗わずに捨てることが一番気持ちがいい。きれいという認識だそうです。
東南アジアの料理は、一般的に香りを大事にしています。
例えば、ココナッツミルクでご飯を炊いたり、カレーリーフの香りを立たせることを大切にしています。香りが食欲を掻き立てる要素であり、香りを引き立たせる調理方法が多い。
先ほど、匂いと器の関係性をお聞きした中で、石井さんが陶器を作る際に、作る前の粘土、土の匂いを感じて創作することがあるのかなど、何かエピソードがあったら教えてください。
いしいちゃんA:
土は、有機物なので、水の中に乾燥した土を入れて、ごみと粘土を分けて水簸(すいひ)という作業をします。やっぱり粘土の中にはゴミも入っています。水面にごみが浮いて、下に沈殿した土を粘土として使います。
しかし、どうしても粘土の中には、木端などが混じってしまうことがあります。先ほども言ったように粘土は有機物なので、木端の中の微生物が土を細かく分解してくれ、少し寝かした方が滑らかな土になるのです。
この粘土の匂いは、皆さんも嗅いだことがある匂いだと思います。
例えば、お習字道具箱のような匂いです。墨とカビが混ざった匂い。微生物が混じっているような匂い。
いわゆる、いい土の匂い。滑らかでいいにおい。
アトリエのお客さん、生徒さんたちは、カビ臭いと思わずに「良い匂い」と言ってくれます。
だけど、粘土を練ったりする粘土板の素材は木材のなので、作品の成形で保管する際は、ビニールをかけて置いておくので、粘土板は粘土からの水分を吸収して独特な匂いがします。たまに、粘土板からきのこが生えたり、粘菌が這う時があります。すごく面白いです。
参加者Q:
木端などは粘土に一緒に練り込んでしまう時もありますか?
いしいちゃんA:
全て有機物なので、燃えてなくなります。固形物としてもそんなに大きなサイズではないから、焼いたら跡形もなくなってしまいます。
くんくんQ:粘土板に生えたきのこは食べないの?
いしいちゃんA:食べません。きっと毒きのこ。
でも、すごくいい匂いがするので、今晩の夕食はきのこカレーにしようか、きのこのマリネにしようかなど考えて、何度もきのこの匂いに感化されて料理を作ったことがあります。
土の匂いによって良質な土なのかは、僕は土を買っているのでわからないけど、土の素材にこだわる陶芸家なら、山に足を運び、土を食べてみて、良質と感じた土を工房に持ち帰り、その土で作品を作る人もいます。
あと、釉薬は、石を砕いた粉や、木材を燃やして粉にしたものを水に混ぜて作るので、たまにカビ臭い匂いがする時もあります。
参加者Q:どんなにおいですか?
いしいちゃんA:
水が腐ったようなにおい。
でも、今は、アルコールを混ぜて腐らないようにしているので、匂いません。
若い頃は、そんなケアをしていなかったので、使うたびに臭いなと思っていました。
においがするのは、有機物。生命を感じると、いつも思いながら作っています。
陶器も、目止めをしないで使うと、例えば、シチューを最初に入れて使ってしまうと、洗っても、ずっとシチューの匂いが残ってしまいます。陶器の目の中にシチューが染み込んで、腐っている匂いですね。なので、ちゃんと目止めをしましょう。
くんくん:それは、陶器に寄生してしまっているってこと!
いしいちゃん:
すでに陶器は無機物になっていて、有機物の分解はできないけれど、無機物に寄生しているって感じ。だから、生乾きの陶器の匂いがする。
近い未来に、この陶器の生乾きに効く洗剤が発売されるかもよ!(笑)
くんくんQ:
陶器の色の匂いについて教えてください。
色素は金属性質だと思うのですが、何か匂いがありますか?
いしいちゃん:
陶器に着色するのは、素焼きの状態の粘土が、水を吸い上げる力で色がついていくので、特に素材の匂いはありません。色素は金属だけでなく、木端や石の粉なので。
でも、金彩、銀彩の着色には、化学薬品を使用するので、釜焼きする時に、殺人でもできそうな、すごく臭い匂いが窯からします。しかし、作品はきらびやかな完成度になります。
この匂いは好きではないけれど、今度の伊勢丹新宿に出品する作品は、金彩をしなければならないので、皆さんが伊勢丹で僕の作品を見る機会がありましたら、“あっ、この金彩の作品は、すごい匂いの後、誕生したんだな”と思ってください。
くんくん:器の見方、概念が変わりますね。
いしいちゃん:匂いはどこでも付きものですね。
終わりに向けて
くんくん:
プログラムも後半になり、毎度、ゲストにお聞きしているのは、どんな生き方をしているのか?教えてください。
世代的には、私たちは同じ世代で、いしいちゃんが51年、私が49年生まれ。
もちろん、子供の頃からそれぞれ違った人生を歩んできていると思います。
以前、お話をお聞きした時に、それぞれ人に対するコミュニケーション、関係性の築き方が違ったことが興味深く思いました。
人には個性があり、それぞれ違ってもいいんだと、個性を肯定的に捉えた生き方、そして、現在のコロナ禍での生き方など。
いしいちゃん:
コロナ禍の生き方で言えば、コロナ禍になったからと言って、生活が一変した、人生が変わってしまったという人がいますが、本来、その以前から人生や状況をなんらかの原因で変えられた経験はしているはずなのです。もちろん、コロナ禍の影響を受けて商売ができなくなったりした変化は理解しています。
例えば、子供の頃で言えば、地域の習慣や学校の校則、会社の規則と役割の状況で、自分の意思とは関係なく、変えざるを得ない経験をしてきていると思います。
大切なことは、どんな状況下であっても“どうやって楽しく生きるか”を考えて実戦していくことだと思っています。
くんくん:
人間は、ネガティブに考えることは得意ですからね。ポジティブに意識を変えることは、とてもエネルギーが必要だし、頭を使うことだと思います。だけど、年を重ねることに、選択肢は増えてきます。経験値が上がることで、若い頃のように全部自分でやらねばと、がむしゃらに頑張らなくなりました。
例えば、自分ができないことは、誰かに頼む、助けてもらう。時間の経過に解決を委ねるなど。諦めることも一つのアイディアで、できないことから新しい発想も生まれると思っています。
いしいちゃん:
だから、この「においの話」のイベントでは、様々な話、経験の会話から、楽しく感じる、ポジティブな視野で見つめる大切さを参加者に届けてほしいと思います。
くんくん:
ありがとうございます。
私は、他者と共有する作業が苦手な面もあり、だけど、大勢の人と一つのことを共同制作し、達成感を味わう喜びは好きです。
皆と共感、共同する行動と同様に、自分の意思、意見を表現することも大切だと思うので、意見を言わずにスルーするのではなく、どんな形であれ、自分の思いを伝えてほしいと思っています。
このプログラムであれば、自分の言葉で話すことですが、人によって得意な表現でいいのです。色や、形、音楽などなど。様々な媒体、職種を活用して楽しく生きてほしいと思っています。
いしいちゃん:
そうですね。僕は、陶芸家であり、尚子さんは、アーティストだから自己顕示欲の塊!!
表現しやすい生き方をしていると思います。でも、そうではない人が世の中の大半。
現代は、インターネットやSNSで自己表現を様々な形でアウトプットできるようになり、よりパーソナルな表現に順応しやすいので、これらを活用していくことで楽しみを得られると思います。
我々、自分を発信する大切さを知る先輩として、頑張って伝えていきましょいう。
くんくん:
そうですね!今日はありがとうございました。
2020.10月上旬 Hisako
最後に告知
いしいちゃんのInstagram
https://www.instagram.com/ishii_chang/
展示
*10/22〜11/1
Drawing numbers (NEWoMAN横浜店)
*10/23〜26
新宿伊勢丹(本館6階催事場)
詳細は、またインスタグラム、SNSなどでご確認ください。
2021年助成:公益財団法人 小笠原敏晶記念財団
2020年助成:横浜市文化芸術支援プログラム、文化庁芸術家支援助成
2020,2021年 協力:白須未香氏プログラム:This workshop was partly supported by JST-Mirai Program (JPMJMI17DC, JPMJMI19D1)
KAKENHI grants from the Japan Society for the Promotion of Science (18K14651).
Home page image photo: 南俊輔